一つやいと
小井土 善彦 2023年06月18日
関西では、お灸を「やいと」と言います。富山県高岡市の瑞龍寺では、田植えの時期に合わせて、6月1日と7月1日の2日、朝5時から夕方4時の間、1つのツボに一つ、お灸を据えてもらいに、人々が訪れる習慣が今でも続いているそうです。お寺の参観料は500円ですが、お灸代500円を支払えば参観料は支払わなくても良いとのことです。
瑞龍寺は、人々の日々の暮らしを守るために、戦を避けた前田利長公の菩提を弔うために建立された寺で、それが故に地元の人たちに愛されていると、偶然通りかかったお坊さんから、お寺の謂れを伺うことができました。
また、戦争になってからでは、仏の教えも力が及ばないため、戦争になる前にそのような事態にならないために、日々の暮らしを大切にする事が大切とのことでした。
庶民の暮らしを圧倒するような派手な装飾は見当たらず、手入れの行き届いた境内に足を踏み入れただけで、清々しい気分になる不思議な場所です。日常の暮らしを大切にするために、非戦を選択した亡き藩主の姿勢は、お灸とともに、現代にも通じる国宝にふさわしい姿だなーと、感じ入りました。
国と国の関係には非戦を、人と人、人と自然あるいは身体と心の関係には非暴力を。国家にも養生が必要と言えそうです。