映画のお知らせ
小井土 善彦 2016年12月05日
http://www.kinenote.com/concussion/
私が調査研究を続けている「軽度外傷性脳損傷(Mild traumatic brain injury:MTBI)」に関連する小説が上映されています。主演はウィル・スミス。映画で取り上げられたCTE(Chronic Traumatic Encephalopathy:慢性外傷性脳症)」は、脳しんとうなどの反復性の負荷による脳損傷で、今まではその程度では脳へのダメージはほとんどなく、回復すると考えられていました。アメリカではアメリカンフットボールの選手会と球団との間で裁判が続いてることをご存じの方もいらっしゃると思います。私が日本の実態を調査したところ、単回(例えば一回のむち打ちや転倒で、意識障害がごくわずかにあるかない程度)であっても、身体的障害や精神的障害が長期にわたり残存する可能性が示されました。WHOは、2004年にMTBIの研究を進めるように世界に呼びかけていますが、日本ではほとんど知られていません。それどころか、MTBIではそのようなことは起こるはずがないと主張し続けている医師も存在しています。事故のあと生活が破壊された被災者は、体調不良の原因がわからず複数の医療機関を受診し、医師から詐病と診断されている例もありました。初期の対応は、予後にも影響します。脳しんとうなどによる脳損傷の予防や対応策の検討がされないまま、柔道など武道の義務化が進められている中学生の健康への影響も危惧されます。研究が進んでいるアメリカでは、サッカーのヘッディングも子どもには禁止されています。幼児乳の揺さぶられ症候群とともに、スポーツにおける脳へのダメージも、もっと認識されるように、学会などで報告を続ける予定です。